記述の作法 vol.3 三点リーダ「…」

行列の中の三点リーダ 記述の作法
横,縦,斜め,自由自在の三点リーダ

三点リーダとは記号の一つである.文末の三点リーダからは,書き手の申し訳ない気持ちとか悲しい気持ちとかがしばしば伝わってくる.

「この問題は解けませんでした…」

みたいな.この用法での三点リーダには何かしらの「感情」や「余韻」が含まれている.

 

 

さて,数学記号としての三点リーダは「感情」や「余韻」を表しているわけでは当然ない.

2, \ 4, \ 6 ,\ 8, \dots

この三点リーダに,「どこまで並ぶんだろう,面倒だな…」というような感情を込める人間は,まあいない.偶数がこの後も続いているんだよ,という「継続」や「省略」の意味である.

三点リーダは「継続」や「省略」の意味

数学は,ある種の規則性や連続性を元に議論や考察を深めることが多い.必然的に,継続や省略の記号を多用することになる.いくつかの例を挙げる.

例1.1. 1+2+3+\cdots +10=55.
左辺は,1+2+3+4+5+6+7+8+9+10 \ を省略した書き方である.全部書くのは面倒だから,三点リーダを使う.規則性を読者に明示するために,1+2+3\ くらいまで書くのが一般的だが,
例1.2. 1+\cdots +10=55.
誤解の恐れがなければ,例1.2のような書き方も普通は許される.
例1.3. 円周率は,3.1415926\cdots \ である.
小数以下が無限に続いていることを表す.省略されていると捉えても良い.
例1.4. n=1, \ 2, \ 3,\dots \ に対して,a_{n}=2n-1 \ とする.
自然数全体に対して,\ a_{n} \ を定めている.

三点リーダの記述作法あれこれ

三点リーダには使い方の作法がある.代表的な作法を3つ紹介する.

三点リーダは三点

数学で二点リーダ「‥」は使わない.従って,黒丸「・」の個数が3の倍数になっていないものは認められない1+2+3+ \cdot\cdot\cdot\cdot\cdot \ なんて式は,足指が5本の鳥くらい奇想天外である.

三点リーダは演算子等の前後に置く

1+2+3 \cdots 10 \ と書いては絶対にいけない.

1+2+3+ \cdots +10\ のように,三点リーダは演算子(+, \times, \ \cup, \ \cap\ など)に挟んで書くのがルールである.

言いかえれば三点リーダの前後の演算子は省略できない.演算子だけでなくカンマなども省略できない(例1.4).

三点リーダには上下の位置がある

このルールだけは,中高の教科書や参考書は採用していないことが多いので,あまり知られていない.しかし,三点リーダは上下の位置を使い分けるとお洒落である.

一般の数学書や論文レベルでは,上下の位置に気を配って書かれていることがほとんどである.

例2.1のように,演算子の後の三点リーダは,上下中央の位置に書く.

例2.1. n!=n \times (n-1) \times (n-2) \times \cdots \times 3 \times 2 \times1.
例2.2のように,カンマの後の三点リーダは,下の位置に書く.
例2.2. \{ 3n \mid n=1,  2,  3,\dots,  333 \} .
例えば,例2.2を次のように書いてしまうと少々不格好である.通常はしないのだが,なぜか中高の教科書はこの書き方を採用している.
例2.3. \{ 3n \mid n=1,  2,  3,\cdots,  333 \} .
見た目の好みだから,作法というよりは流儀みたいなものかもしれないが,かなり広く浸透している流儀である.僕は上下位置を気にして書いている.

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