記述の作法 vol.2 式に論理的なつながりをもたせる

式 記述の作法
式の例.
問題1.1. 実数係数の \ 2 \ 次方程式\ x^{2}+kx+9=0 \ が実数解をもたないとき, \ k \ の値の範囲を求めよ.

突然だが,この問題に対してどんな記述をするだろうか.

解答例1.2. 判別式を \ D \ とすると,D=k^{2}-36<0 \ である.従って, \ -6<k<6 \ である.

解答例1.2はありがちだが良くない,と個人的には思っている.ちなみに,東京書籍の文科省検定済教科書にもほぼ同じ記述が載っているので,こう書いたら間違いだとか減点だとか言うつもりはない.教科書の著作関係の方々の方が,僕より何十枚も上手である.

それなのに,なぜ解答例1.2に異を唱えているのか.論理的には,D=k^{2}-36 \ かつ\ D<0 \ だから,\ k^{2}-36<0 \ が得られる.解答例1.2では,\ D=k^{2}-36 \ までは良いが,それに続く\ k^{2}-36<0 \ がなぜ得られるのか不明瞭である.式は左から順に読むので,ここで読み手としてはクエスチョンがつく.だから,解答例1.2は個人的には好きではない.では,どうするか.

解答例1.3. 判別式を \ D \ とすると,D=k^{2}-36 \ かつ\ D<0 \ である.従って,\ k^{2}-36<0 \ が成り立ち, \ -6<k<6 \ である.

横着せずこう書けばよい.すっきり済ませたければ次のような書き方も良い.

解答例1.4. 判別式を \ D \ とすると,0>D=k^{2}-36 \ である.従って, \ -6<k<6 \ である.

解答例1.4は,解答例1.2から式の順番を入れ替えただけだが,これによって論理的なつながりが明確になった0>D \ は実数解をもたないという条件から導いたことで, D=k^{2}-36 \ は判別式の定義と与えられた方程式から即座にいえることである.

 

同じような問題をもう一題.

問題2.1.  \ 2 \ 次方程式\ x^{2}-2x+3=0 \ の異なる実数解の個数を求めよ.
問題2.1に対して,冒頭の問題1.1と同じ順番で書くと痛い目を見る.
解答例2.2. 判別式を \ D \ とすると,0>D=(-2)^{2}-4 \cdot 1 \cdot 3 =-8 \ である.従って, \ 0 \ 個である.
解答例2.2を左から順に読めば,\ 0>D \ の時点でクエスチョンである.次の解答例2.3の順番を採用すべきであろう.
解答例2.3. 判別式を \ D \ とすると,D=(-2)^{2}-4 \cdot 1 \cdot 3 =-8 <0 \ である.従って, \ 0 \ 個である.
 
簡単な問題であれば,どんな書き方をしたところで誤解を生む恐れはないかもしれない.一方で,式は書く順番によって論理的なつながりや意味をもたせることができるのもまた事実だ.この事実を意識するだけで,長大で複雑な論理展開が必要な場面でも,知性あふれる文章を書けるようになる.

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