数学界以外でも市民権を得て久しい「方程式」という言葉.この言葉の火付け役の一つは,プロ野球の「勝利の方程式」という独特の言い回しではないだろうか.ちなみに,僕が勝利の方程式といわれて真っ先に思い浮かぶのは阪神のJFK(ジェフ,藤川,久保田の3投手のこと)だ.別に阪神ファンではないのだが.
ところで,よくよく考えてみると,「阪神の勝利の方程式はJFK」というのは数学的には甚だ違和感のある表現だ.
方程式とは,未知数を表す文字を含む等式である. \ x \ を未知数としたときの
x=1 \hspace{30pt} (1)
とか, \ x,y \ を未知数としたときの
y=x^{2}-3 \hspace{30pt} (2)
は,方程式の例である.そして,与えられた方程式を解くというのは,数学ではしばしば重要視される. (1) の解は x=1 であり, (2) の解は (x,y)=(2,1) をはじめ無数に存在する.
さて,冒頭の「阪神の勝利の方程式はJFK」は,方程式といいつつ未知数を表す文字が含まれていない.JFKは単に人の名前の頭文字であって,未知数ではない.これは方程式ではない!
数学コトバの使用例. 阪神の勝利の方程式の解はJ, F, Kである.
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